
今、なぜ、お役立ち道経営が求められるのでしょうか?
社会の動きから、その意義について考えてみました。
また、お役立ち道経営実践のための、経営者の役割、ミドルマネジャーの役割についてまとめました。
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自分らしくより良い社会づくりに貢献するために、一人ひとりがお役立ちの精神と技量を究め続けることが「お役立ち道」です。その一人ひとりが集まり、組織(企業や団体 ※以下同じ)としての「お役立ち道」を究めることを「お役立ち道経営」といいます。
具体的には、「お役立ち道の文化をつくり、社会をより良くする価値を共創し続ける経営」を「お役立ち道経営」といいます。「お役立ち道の文化」とは、「『社会をより良くする新たな価値を共に創り続けよう』とする組織文化のこと(ジェック)」です。
今、世界規模で、紛争、貧困、環境、災害、人権侵害等、多くの社会課題があります。組織は、「社会の公器」としてこれらの社会課題を解決し、お客様のニーズに応え、より良い社会を創る役割が求められています。
主な社会の動きとして、以下の3つをご紹介します。
2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。
[外務省]JAPAN SDGs Action Platform, https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/, 2024/3/8閲覧
●我が国は、先端技術をあらゆる産業や社会生活に取り入れ、イノベーションから新たな価値が創造されることにより、誰もが快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることのできる人間中心の社会「Society 5.0」を世界に先駆けて実現していきます。
[内閣府] Society 5.0, https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/, 2024/3/8閲覧
●「1つの国ないし特定の地域が、ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような自然環境、社会的装置(p.45)」を「社会的共通資本」としました。
●この社会的共通資本は、「土地をはじめとする、大気、土壌、水、森林、河川、海洋などの自然資本だけでなく、道路、上・下水道、公共的な交通機関、電力、通信施設などの社会的インフラストラクチャー、さらに教育、医療、金融、財政制度などという制度資本(p.47)」も含まれます。
●そして、このような社会的共通資本を「誰にとっても等しく大事なもの」と位置づけることで、これらをどこかが一様にコントロールするのではなく、皆で守り、持続的な維持をしていくことで「ゆたかな社会」を創ることを目指しています。
<参考>宇沢弘文(2015)『宇沢弘文の経済学 社会的共通資本の論理』, 日本経済新聞出版本部 ※「」内引用
上記のように、自組織とお客様のみならず、社会全体がより良くなることを目指そうとする流れは、お役立ち道経営と相通じる点です。このように「社会をより良くする新たな価値の創造=お役立ち創造」が求められているのです。
社会に役立つことを行うのは慈善事業である、と捉えられることがあります。一時期、フィランソロピーやメセナなど、慈善活動や文化・芸術振興を行う「社会貢献活動」に注目が集まりました。そのイメージでお役立ち道経営をとらえてしまい、本業以外に手を出す余裕はないと経営判断をしてしまうケースがあります。しかし、慈善事業ではなく、自組織が培ってきた得意な分野、つまり本業で真っ向から社会の役に立とう、社会課題を解決しようというのがお役立ち道経営です。
自社がお客様と共に、「その先のお客様の課題」や「社会課題」に対して今よりもお役に立てる「お役立ち創造」に取り組むことで、お客様自身のお役立ち度が高まり、お客様の業績も高まり存続し続けられます。その結果、自社との取り組みも続き、自社の業績も高まり存続し続けられます。
このように、現在、多くの組織が、本業を通じて「お役立ち創造」に挑戦しています。さらに、一つの組織で取り組むのではなく、同じ志を持つ組織同士での協業が進んでいます。本業を通じて「お役立ち創造」を目指すからこそ、各組織のコアコンピタンスが強化され、お客様や協業先からも「共創のパートナー」として選ばれ続けることができるのです。
お役立ち道経営の実現は、組織のメンバーの一人ひとりがお役立ちイメージで描いた、お役立ちの意識の醸成と、「社会をより良くしたい」という「お役立ちビジョン」の実現を支援することから始まります。一人ひとりが仕事を謳歌し、仲間と新たなお役立ちを共創し、組織としての「より良い社会の実現」につなげていくことが重要です。
さらに、自組織だけにとどまらず、お役立ち道がステークホルダーとの共創によってさらに拡大し、最終的には、社会に属する一人ひとりが、その人らしい役立ち方で貢献し合い、仕事や人生を謳歌しているというのが、お役立ち道経営の目指す姿です。

これらを実現するためのマネジメントについて、ご紹介します。
自組織の文化を「お役立ち道の文化」として醸成するには、「挑戦」「協調」「お役立ち」の三つの価値観とそれに基づく行動様式をより良く革新しなければなりません。
組織を人体に置き換えて表現するならば、「組織文化の醸成」は「体質改善」に当たります。冷え性、太りやすい、高血圧など、「体質」に起因する症状に対する根本的解決策として、「不規則な生活習慣を改善する事、つまり食事・休息・適度な運動をきちんとしなさい」と医師からは必ず言われます。しかし、日常生活においてそれができず、つい「ダイエット器具購入」など、特定部分だけにフォーカスした要素還元的な「打ちやすい手」に頼ってしまいます。ところが、根本の体質が変わっていないのですぐリバウンドしてしまいます。
これと同じように組織文化(体質)を変えるための根本的な打ち手(生活習慣の改善)は、経営機能をきちんと発揮することです。では、どのような経営機能を発揮するべきかを経営層とミドルマネジメント層に分けて考えていきたいと思います。
当然のことながら、経営者は経営者にしかできないことを確実に遂行することが必要です。では経営者でなければできないことは何でしょうか?
P.ドラッカーは、以下のように述べています。
トップマネジメントは何を専管とするかを考えなければならない。それは、全体、一体性、未来に関わる意思決定である。全体を見ることができ、全体に責任をもつ者だけが行うことのできる意思決定である。 --- (略) ---
第一に、参入すべき技術、市場、製品、事業の決定、廃棄すべき事業の決定、組織としての価値観、信条、原則の決定である。
第二に、資金配分の決定である。 --- (略) ---
第三に、人材配置の決定である。 --- (略) ---
(『マネジメント - 課題・責任・実践』)
P.F.ドラッカー(2005)『ドラッカー365の金言』, ジョゼフ・A・マチャレロ編, 上田惇生訳, ダイヤモンド社, p.357
第一の「事業の決定・組織としての価値観の決定」という観点でお役立ち道の文化を創るために重要なことは、「自社の利益・業績・成長を第一とする価値観」ではなく、「社会・市場・顧客などステークホルダーに対するお役立ちを第一とする価値観」を明確に打ち出し、当たり前のものとして根付くまで旗を振り続けることです。
この価値観をすべての起点として事業や方針戦略を策定し、お役立ちを実現するためのリソース(ヒト・モノ・カネ・情報)の最適配分を決定することこそ、経営者が意志決定すべきことです。これが、第二の「資金配分の決定」、第三の「人材配置の決定」につながります。
これらと連動した人事戦略と人事制度の構築も経営者の役割です。「人は評価される方向に動くもの」です。「経済的価値や経営効率を示す指標」の達成度だけで評価をしている組織も多くみられますが、この観点の目標だけでは「経済的価値や効率を上げるために仕事をする組織」をつくることが目的になってしまい、お役立ち道の文化づくりを目的とした目標と評価にはなりません。
ゆえに、
以上を、評価 / 等級 / 目標管理 / 教育 などの人事制度に落とし込むことが必須です。
マネジャーはメンバーに最も近い経営管理者です。マネジャーの果たす機能は、「チームの『お役立ち道の文化』を醸成」し「お役立ち道を自力で歩み続ける人を育てる」ことにあります。
人は「自分で目指したいものを描き、それに向かって挑戦し、試行錯誤を繰り返し、達成したら新たに目指したいものを描く」という過程を経て成長します。それに対して、承認したり、ほめたり、助言を出したり、時には叱ったりという支援を行うことこそが、マネジャーが果たす機能です。以下、具体的に整理をします。
チームのお役立ちイメージ(我々は、どのようなお役立ちをするチームなのか)をメンバーと共創しながら想いを統合します。チームのタスク優先ではなく、メンバーのお役立ちの想いを活かして、「このチームのお役立ちイメージを実践することが、自分のお役立ちイメージにもつながる」と思えるかどうかが重要です。これがチームビルディングの第一歩です。
さらに、メンバーのお役立ちイメージをベースに、想いと強みでチーム内の役割分担をし、チームとしての目標(KPI含む)と、メンバー個々の目標化を行います。目標化する際は、これまでの経験則に偏らず、「経済的価値や経営効率を示す指標」に挑戦し実現することが、チームやメンバーのお役立ちイメージ実現にどのように結びつくのかを教えたり考えさせたりと、常に意識させ続けることも必要です。
お役立ち道経営の目指す姿は、「組織のメンバー一人ひとりが仕事を謳歌し、本業を通じて社会をより良くする『お役立ち創造』にチャレンジしている」状態です。
では、その要件とは何か、確認をしていきましょう。
組織は、自分と組織のお役立ちビジョンを実現する場です。
個人のお役立ちイメージが明確だと、組織のお役立ちイメージに共鳴できるかどうかの判断がつきやすくなります。そして、共鳴し一致点を見い出すことができれば、指示命令通りに動くのではなく、自らお役立ちを共創する動きが起こります。
さらに、組織が期待している以上のお役立ちが、実現する可能性も、広がります。
多くの経営者は、社会への貢献はもちろんのことですが、組織のメンバーがやりがいや誇りを持って仕事に取り組んで欲しいと願っています。
人には自分が成し遂げたい「何か」があります。
お役立ち道経営では、メンバー一人ひとりが何を成し遂げたいのか、何が喜びなのかをつかんで、活き活きとお役立ち道を歩み仕事を謳歌することができるようになります。
そして、組織でより大きなお役立ちを実現するという醍醐味ややりがいも味わうことができるようになります。
ぜひ、より良い社会を創る「共創のパートナー」として、共にイノベーションを起こしていきましょう!
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